オーバー・エンプロイメントとは、海外で使われている言葉で、ざっくり言うと「フルタイムの仕事を複数同時に持つ働き方」だ。
普通の副業とは少し違う。
本業が終わったあとに数時間だけ別の仕事をする、という話ではない。フルタイムの仕事を1つだけ持つのではなく、J1、J2、場合によってはJ3のように、複数のフルタイム級の仕事を同時に持つ。
これが海外で言われているオーバー・エンプロイメントの中心だ。
日本語で近い言葉を探すと「過剰労働」や「過剰就業」が出てくる。ただ、オーバー・エンプロイメントは単に「働きすぎ」という意味ではない。
むしろ、「会社に依存せず、複数の給与・報酬を得るための戦略」として語られることが多い。
もちろん、かなり攻めた働き方だ。万人におすすめできるものではない。
自分も過去に、これに近い働き方をしていた。正社員として働きながら、フルタイムに近い業務委託案件を受けていた時期がある。手取りは35万円前後から80万円近くまで増えた。
収入だけ見れば、かなり大きい。生活も普通に変わった。
ただし、リスクもある。
特に日本でやるなら、就業規則、契約内容、競業、秘密保持、本業への支障、健康管理を無視して進めるのは危ない。
この記事では、まず海外で言われているオーバー・エンプロイメントの意味を整理する。そのうえで、リターンとリスク、日本で近い形を取るなら何に気をつけるべきか、そして自分の経験談をまとめる。
オーバー・エンプロイメントとは
オーバー・エンプロイメントは、複数のフルタイム仕事を同時に持つ働き方だ。
英語圏では、1つ目の仕事をJ1、2つ目をJ2、3つ目をJ3のように呼ぶことがある。JはJobのJだ。
イメージとしては、こういう形になる。
| 呼び方 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| J1 | 1つ目のフルタイム仕事 | メインの収入源 |
| J2 | 2つ目のフルタイム仕事 | 追加の収入源 |
| J3 | 3つ目のフルタイム仕事 | さらに収入を積む仕事 |
ポイントは、「副業」よりも重いことだ。
副業なら、夜や休日に数時間だけ働くイメージがある。オーバー・エンプロイメントは、フルタイム級の仕事を複数持つ。だから、収入の伸び方も大きいが、同時に負荷も大きい。
成立しやすい条件もある。
| 条件 | なぜ必要か |
|---|---|
| リモートワーク | 移動時間がない |
| 会議が少ない | 時間の衝突が起きにくい |
| 成果物ベース | 稼働時間より成果で見られる |
| 即戦力スキルがある | 学習コストが少ない |
| 仕事の処理速度が速い | 複数案件を回せる |
| 自己管理ができる | 納期や会議を整理できる |
逆に、出社必須、会議が多い、常に即レスが必要、未経験領域、という仕事ではかなり難しい。
海外で言われるオーバー・エンプロイメントの考え方
海外でオーバー・エンプロイメントが語られる背景には、リモートワークの普及がある。
リモートワークになると、仕事の実態が見えにくくなる。オフィスに座っている時間ではなく、会議に出て、成果物を出し、期限を守ることが評価の中心になりやすい。
そこで、「実際の作業時間に余白があるなら、別のフルタイム仕事も持てるのでは?」という考え方が出てくる。
かなり割り切った発想だ。
会社が自分の人生を守ってくれるとは限らない。給料が大きく増えるとも限らない。いつレイオフされるかも分からない。ならば、自分も収入源を複数持つ。
これが、海外で語られるオーバー・エンプロイメントの根っこにある。
つまり、単なる働きすぎではない。
「会社への忠誠より、自分の経済的安全を優先する」という考え方に近い。
もちろん、ここには賛否がある。会社に伝えずに複数のフルタイム仕事を持つケースもあり、契約違反や利益相反、情報管理の問題が出る可能性もある。
だから、オーバー・エンプロイメントは「賢い働き方」として語られることもあれば、「かなり危ない働き方」として語られることもある。
どちらも一面では正しい。
過剰労働とは少し違う
日本語で「オーバー・エンプロイメント」を考えると、「過剰労働」という言葉に引っ張られやすい。
ただし、過剰労働とオーバー・エンプロイメントは同じではない。
過剰労働は、働きすぎによって心身や生活に負荷がかかっている状態を指すことが多い。長時間労働、残業過多、休日出勤、休息不足のような文脈だ。
一方、オーバー・エンプロイメントは「複数の仕事を同時に持って、収入を増やす働き方」を指す。
| 言葉 | 主な意味 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 過剰労働 | 働きすぎている状態 | 健康・労働時間の問題 |
| 過剰就業 | 希望より長く働いている状態 | 労働時間のミスマッチ |
| オーバー・エンプロイメント | 複数のフルタイム級仕事を持つ状態 | 収入戦略、掛け持ち、リスク管理 |
とはいえ、オーバー・エンプロイメントが過剰労働につながることはある。
収入を増やすために仕事を増やしすぎる。会議や納期が重なる。睡眠を削る。休む時間がなくなる。
こうなると、ただの過剰労働になる。
だから大事なのは、「オーバー・エンプロイメント=かっこいい稼ぎ方」と雑に捉えないことだ。
リターンは大きい。でも、やり方を間違えると普通に壊れる。
オーバー・エンプロイメントのリターン
リターンはかなり分かりやすい。
収入が増える。
これが一番大きい。
会社員として働いていると、給料は急には増えにくい。昇給しても月1万円、2万円ということは普通にある。成果を出しても、会社の給与テーブルや評価制度に引っ張られる。
一方で、フルタイム級の仕事をもう1つ持てば、収入の増え方は一気に変わる。
もちろん、誰でもできるわけではない。即戦力として価値を出せるスキルが必要だ。
ただ、すでにスキルがある人にとっては、会社内の昇給を待つより収入が増えるスピードが速い。
| リターン | 内容 |
|---|---|
| 月収が一気に増える | 収入源が単純に増える |
| 会社依存が下がる | 1社に人生を握られにくくなる |
| 市場価値が見える | 自分のスキルが外でいくらになるか分かる |
| 生活防衛資金を作りやすい | 固定費を変えなければ貯金が増える |
| 独立・投資の元手を作れる | 次の選択肢を持ちやすくなる |
自分の場合も、ここはかなり大きかった。
手取り35万円前後だった生活が、フルタイムに近い業務委託案件を足したことで80万円近くになった。
この差は、普通に人生の見え方を変える。
家電が壊れても詰まない。急な出費が来ても慌てない。旅行や引っ越し、投資、独立準備も考えやすくなる。
お金があると、問題が消えるわけではない。でも、問題への耐久力は上がる。
これはきれいごと抜きで、かなり大きい。
オーバー・エンプロイメントのリスク
一方で、リスクもかなり大きい。
特に危ないのは、「複数の仕事を同時に持てば収入が増える」という部分だけを見て、契約や信用を軽く扱うことだ。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 契約違反 | 副業禁止、専念義務、競業避止に触れる可能性がある |
| 利益相反 | 同業・競合案件だと問題になりやすい |
| 情報漏洩 | 顧客情報や社内情報の扱いで事故る |
| 会議の衝突 | J1とJ2の予定が重なる |
| 成果低下 | どちらの仕事も中途半端になる |
| 健康悪化 | 睡眠不足や疲労がたまる |
| 信用を失う | バレる以前に、成果や態度で信頼を落とす |
オーバー・エンプロイメントは、仕事ができる人ほど成立しやすい。
でも、仕事ができる人でも、時間は増えない。
会議が重なると詰む。納期が重なると詰む。体調を崩すと一気に回らなくなる。
あと、精神的な負荷もある。
常に複数の予定を気にする。連絡先を間違えないようにする。どの会社に何を言ったか管理する。
このあたりが雑になると、かなり危ない。
日本でやる場合の注意点
海外で言われているオーバー・エンプロイメントは、基本的には「フルタイム級の仕事を複数持つ」という考え方だ。
その意味を踏まえて日本で近い形を考えるなら、「フルタイム雇用を複数持つ」よりも、「業務委託を含めてどう設計するか」が現実的な論点になる。
日本で現実的に起こりやすいのは、以下のような形だ。
| パターン | 現実度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 正社員 + 正社員 | 低い | 雇用保険、社会保険、就業規則の問題が大きい |
| 正社員 + 業務委託 | 中 | 副業規定、競業、稼働時間、本業への支障に注意 |
| 業務委託 + 業務委託 | 高め | 自己管理、契約責任、納期管理が重い |
厚生労働省も、副業・兼業では、勤めている企業の労働契約や就業規則を確認すること、本業と副業の業務量や健康状態を自分で管理することが必要だとしている。詳しくは厚生労働省の副業・兼業と労働条件を見ておくといい。
つまり、日本で考えるならポイントはここだ。
「バレにくい方法は何か」ではない。
「契約上、信用上、健康上、壊れない設計にできるか」だ。
ここを間違えると、収入は増えてもキャリアが傷つく。
私が近い働き方をしていた話
自分も過去に、オーバー・エンプロイメントに近い働き方をしていた。
だいたい6年くらい前だ。正社員として働きながら、フルタイムに近い業務委託案件を受けていた。
当時はコロナ中で、正社員側の仕事にかなり余白があった。
朝起きて、朝のミーティングに出る。その後は、正直やることがかなり少なかった。昼過ぎに少し仕事をして、あとはゲームをしたり、昼寝をしたり、筋トレをしたりしていた。
最初は楽だった。
でも、1年くらいで飽きた。
暇で給料がもらえるなら最高じゃないかと思うかもしれない。自分も最初はそう思っていた。でも、実際にはそこまで楽しくない。
会社に仕事がない以上、どれだけ頑張っても評価の伸びしろが少ない。すごく成果を出したから、来月から給料を2倍にするよ、みたいなことは起きない。
そこで、フルタイムに近い業務委託案件に応募した。
業種は、自分がメインでやっていた広告運用まわりだ。つまり、完全な即戦力領域だった。
結果として、次の月から収入は一気に増えた。
それまでは手取り35万円くらい。業務委託を足してからは、月の手取りが80万円近くになった。
生活はかなり変わった。
それまでもカツカツではなかったが、そこまで贅沢できるわけでもなかった。家電が壊れたら普通に痛い。旅行や大きな買い物も、少し考える必要があった。
でも、収入が増えると感覚が変わる。
洗濯機と冷蔵庫が同時に壊れたことがあった。普通なら、その月の給料がほぼ吹き飛ぶイベントだ。でも、そのときは業務委託分の収入で普通に買えた。
これはかなり大きかった。
お金があると、人生のトラブルが「終わった」ではなく「まあ買えばいいか」になる。精神的な余裕がまったく違う。
ただし、今から同じことをやるなら、当時よりかなり慎重に進める。
就業規則、契約内容、競業、秘密保持、本業への支障。ここを確認せずに、収入だけを取りにいくのは危ない。
収入は大事だ。でも信用もある程度必要なのだ。
始める前に確認すべきこと
オーバー・エンプロイメントに近い働き方を考えるなら、勢いで始めないほうがいい。
最低でも、以下は確認しておきたい。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 就業規則 | 副業禁止か、許可制か、届出制か |
| 契約内容 | 競業避止、秘密保持、専念義務があるか |
| 案件の業種 | 本業と競合しないか |
| 稼働時間 | 会議や納期が重ならないか |
| 成果責任 | どこまで成果を求められるか |
| 税金 | 確定申告、住民税、経費の扱い |
| 健康 | 睡眠、休息、運動の時間を確保できるか |
特に重要なのは、契約と時間だ。
契約でアウトなら、どれだけ稼げそうでもやめたほうがいい。時間が重なるなら、どれだけ単価が高くても長くは続かない。
あと、体力も軽く見ないほうがいい。
若いうちは多少無理がきく。でも、睡眠を削る働き方は長持ちしない。
短期で目的を決めてやるならまだしも、ずっと続ける前提にするとかなり消耗する。
向いている人・向いていない人
オーバー・エンプロイメントに近い働き方は、向き不向きがはっきり出る。
向いているのは、すでに即戦力スキルがあり、仕事の処理速度が速く、リモートで成果を出せる人だ。
| 向いている人 | 理由 |
|---|---|
| 即戦力スキルがある人 | 新しく覚える時間が少なくて済む |
| リモートで働ける人 | 移動時間がない |
| 会議が少ない仕事を持つ人 | 時間の衝突が起きにくい |
| タスク管理が得意な人 | 複数案件を整理できる |
| 短期で目的がある人 | 貯金、投資、独立資金などに向く |
逆に、未経験職種でやるのはおすすめしない。
本業だけで疲れている人、会議が多い人、納期管理が苦手な人、会社に隠しごとをするストレスに弱い人にも向いていない。
収入を増やしたいなら、まずは普通の副業から始めたほうがいい。
いきなりフルタイム級を足すのは、かなり負荷が高い。
とはいえ人生にはレバレッジも大事
レバレッジとはリターンとリスク割合を考えて大きく張るという考え方だ。
正直を言う。日本人として、レバレッジのない人生は普通の人生だ。つまり想像できる範囲の生活しかできないし、全て想定内の面白みのない人生だ。
まあ「ささやかな普通の幸せが本当の幸せなんだ」という人もいるだろう。私は宗教みたいなものだと思っているし、なんだったら都合の良い奴隷を生み出すための魔法の言葉だと思っている。結局、想定の給料くらいでずっと働いてくれるのが経営者も国家も嬉しいからね。だからサラリーマンの正社員をやっていても普通の人にしかなれない。
それで自分の人生が良いならそれも良いだろう。
だけど、人より抜きん出たい、良い生活をしたい。良い家に住みたい。良い車に乗りたい。したことない体験をしたい。
そんな願望があるなら、私はリスクオンでやってみるべきだと思う。
結局、経営者がお金持ちなのは、レバレッジをかけてリスクを負っているからだ。リスクなしに良い人生は歩けない。リスクを取った結果なのだ。
それでいうと、オーバーエンプロイメントはリスクが少ない。
まあ、副業で稼ぎ始めると回りの人に言いたくなる気持ちはわかる。
副業とかこのオーバーエンプロイメントがバレる要因の第一位が副業でめっちゃ稼げてるから自慢話をしちゃって「あいつ副業してるらしい!」ってタレこまれることなんだって!実を言うと私もめっちゃ自慢してた。周りが良い人だったからタレこまれなかっただけで。
そして2位が副業の確定申告の時に「普通調整」にしていないからなんだって。
これをしてないと、住民税や所得税とかが会社の給与明細に反映されちゃうから、あれ、この人こんな住民税のはずないのに!ってバレちゃうらしい。
まあ、そんなリスクオンで毎月ちょっとしたボーナスが入ってくる生活はいかが?
オーバー・エンプロイメントについてよくある質問
オーバー・エンプロイメントとは何?
海外で言われるオーバー・エンプロイメントは、複数のフルタイム級の仕事を同時に持つ働き方を指す。単なる残業や働きすぎではなく、J1、J2のように収入源を複数持つ発想に近い。
過剰労働とは同じ意味?
完全に同じではない。過剰労働は長時間労働や負荷の高い状態を指すことが多い。一方、オーバー・エンプロイメントは複数の仕事を持って収入を増やす働き方として語られることが多い。
日本でもオーバー・エンプロイメントはできる?
近い働き方はできる。ただし、日本では雇用保険や就業規則、契約上の制限があるため、正社員を複数同時に持つ形は現実的ではない。やるなら契約や税務、労務の確認がかなり重要になる。
会社にバレるリスクはある?
ある。住民税、社会保険、同僚への発言、勤務時間の重なり、成果物の権利関係など、バレる要因はいくつもある。収入だけを見て軽く考えると痛い目を見る可能性がある。
オーバー・エンプロイメントはおすすめ?
万人向けではない。即戦力スキルがあり、時間管理ができ、契約や健康リスクを理解できる人なら選択肢になる。ただし、まずは普通の副業や業務委託案件から始めるほうが現実的だ。

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